私立探偵・徳二郎の事件簿
時は天保13年、所は江戸。
おりしも天保の改革真っ盛り、厳しい風紀引き締めに、道行く人の顔もどこか不景気そう。
しかし、そんなことを気にもとめずに我道を突っ走る、一人の青年がいた。
その名は徳二郎。
私立探偵は庶民の味方。
事件があればどこでも出かけます。
江戸のオーギュスト・デュパンを目指して、今日も町を駆ける。
登場人物
徳二郎: 主人公。私立探偵。岡っ引きではなく、あくまで私立探偵。
地下出版された「モルグ街の殺人」を読んで感動し、自分も目指してみたくなった……らしい。
大店・伊勢屋の次男坊であり、兄に店のことを全て任せて老番頭の狭助と二人で気楽な生活を送っている。
息をするように嘘をつき、心にもない褒め言葉を笑顔で吐ける駄目な才能の持ち主。
狭助: 通称セバ助。白髪に白髭の老人。
隠居した伊勢屋の元番頭、兼、徳二郎のお目付け役。
生真面目な常識人だがたまに羽目を外す。
入谷 丞之進: 南町奉行所所属の廻り方同心。べらんめえ調の、良くも悪くも侍らしからぬ男。
ちゃらんぽらんなようで生真面目で、証拠が揃わないうちは容疑者の逮捕に踏み切らないのをモットーとする。
血の気が多いくせに流血や傷には極端に弱い。
上司である町奉行の厳しい取り締まり方針には内心反感を抱いているようでもあるが……?
辰じい: 木戸番。だが商売熱心が過ぎ、時代考証も弁えず番小屋を「コンビニエンス番屋 六つ半四つ半」に改造してしまった。
広い人脈を駆使して情報収集に強力してくれるありがたい存在。
悩みの種は店の前に夜ごとたむろす御家人ヤンキー。
ストーリー
探偵業を開業するも、ちっともそれらしい依頼が来ず無為に日々を過ごしている徳二郎のもとに、かんざし屋・近江屋からの依頼が舞い込む。
近江屋の娘・お美奈につきまとっていた男が何者かに殺された。その容疑がお美奈にかかったので、冤罪を晴らしてほしい……というのである。
二つ返事で了承する徳二郎。しかし、捜査は思わぬ展開を見せるのだった。
現場で目撃された女は、本当にお美奈なのか。お美奈たちが小さいころに起きた連続辻斬り事件の噂が、何故今更表舞台に出されるのか。
複雑な人間関係が交錯し、情報は錯綜し、時代考証なんて言葉は虚空に飛んで行ってしまうそんな中、徳二郎ははたして名探偵になれるのか?